タンパク質の扱いについて
さて、今回はちょっとセンシティブな話をしようかと思います。
その内容はズバリ、「低年齢の子とプロテインパウダー」の話です。
「え、そんなん駄目に決まってるはずでは?」
って思いますよね。とっさに。まあ基本的には駄目ってことになってると思います。私もそう言っといたほうがいいと思ってる。基本的には使用禁止にしといたほうがいいと思う。
でも今回は、「何がいけないのか」について、真面目に向き合ってみようと思います。
1. そもそもプロテインって何?
プロテイン、直訳すればタンパク質ですね。でも日本語の中で「プロテイン」といったら一般的にはプロテインパウダーを指すことが多いかと思います。
プロテインパウダーといえば、ベースは何かしらのタンパク質(ミルク由来、大豆由来など)で、そこに適宜ビタミン・ミネラルが追加されていたり、飲みやすいように味や成分が調整されてる商品ですよね。なので、たいてい販売されているものは混ぜものになってます。
たとえば我が家でヘビーユースしてるプロテインパウダーはこちら。
こちらの場合は、以下のような成分が入っているそうです。
(マッスルフィットプロテインプラス・プロテイン | 森永製菓 森永ダイレクトストア より引用)
このように、「プロテインパウダー」と一口に言っても、様々な栄養成分が付加されている食品です。
その一方で、純粋に「タンパク質」成分だけで構成されているプロテインパウダーも販売されています。たとえば我が家で使用していたのはこちら。
原材料は「乳清たんぱく濃縮物(乳成分を含む) 」のみです。他には(表記が必要なくらいの量のものは)なにも入っていないようです。こういうプロテインパウダーの商品もあります。
なお乳清というのはつまりホエイのことです。ホエイの他にはカゼインという別のタンパク質のみでできているプロテインパウダーも販売されていたります(それぞれで効果が異なります)。
2. 粉ミルクの成分について
では、プロテインパウダーのなかのタンパク質についてある程度知識がついたところで、粉ミルクの成分について見てみましょう。
我が家で使用していたのはこちらの粉ミルクです。
こちらの商品の原材料名を見てみますと、
乳糖(アメリカ製造)、調整食用油脂(豚脂分別油、大豆白絞油、パーム核油、精製魚油、アラキドン酸含有油脂)、乳清たんぱく質、カルシウムカゼイネート、フラクトオリゴ糖、バターミルク、デキストリン、脱脂粉乳、食塩、酵母/リン酸Ca、塩化Mg、炭酸Ca、塩化K、炭酸K、V.C、イノシトール、コレステロール、タウリン、ピロリン酸鉄、塩化Ca、硫酸亜鉛、シチジル酸Na、V.E、パントテン酸Ca、ウリジル酸Na、L-カルニチン、ナイアシン、イノシン酸Na、グアニル酸Na、5'-AMP、硫酸銅、V.B1、V.A、V.B6、V.B2、カロテン、葉酸、ビオチン、V.K、V.D、V.B12
明治ほほえみ らくらくキューブ 1296g(27g×48袋)(特大箱) | 粉ミルク・液体ミルク | 株式会社 明治 - Meiji Co., Ltd. より引用
ご覧の通り、「乳清たんぱく質」が含まれていますね。
ちなみにフォローアップミルクも我が家では使用しています。
こちらの原材料についても見てみますと、
フォローアップミルク ぐんぐん|商品情報|離乳食、粉ミルク、ベビーフードの和光堂
となっております。こちらも「たんぱく質濃縮ホエイパウダー」としっかり書かれていますね。
つまり、赤ちゃんが口にすることを推奨されている食品には、そもそもホエイプロテインが含まれている、と言えるわけです。なので、「赤ちゃんはホエイプロテインを一切口にしてはいけない」というわけではない、と思われます。
3. 子供向けプロテイン商品について
日本でも実は子供向けプロテインパウダー製品が販売されています。たとえば
ザバスのほうでは「運動する10〜15歳」を想定しているようです。
ウィダーのほうは「小中学生におすすめ」という記載もあります。
こちらの小児科医監修の記事では、
The short answer for whether protein powder is safe for kids is: It depends.
と、「場合による」と記載されていますね。ほとんどの子どもたちであればタンパク質は普通の食事で十分な量を摂取できるので過剰な摂取は不要、しかしヴィーガンなどの場合では摂取が必要、といった表現をしています。
過剰に摂取すると体に悪影響がある(腎臓に負担がかかる)などの記載もみられました。
4. 子供に必要なタンパク質摂取量
「ほとんどの子どもたちであればタンパク質は普通の食事で摂取できる」、とは言いますが、では、子供に必要な量のタンパク質ってどのくらいの量になるのでしょうか。
これについては以前、「高タンパク質おやき」のときにまとめましたので、そちらから引用します。
こちらの「2 対象特性 乳児・幼児」の、397ページからの表を参考にしています。
こちらを参照すると、タンパク質の「推奨量」だけ見ても、
0-5ヶ月は10 g/day
6-8ヶ月は15 g/day
9-11ヶ月は25g/day
1-2歳は20 g/day
3-5歳は25 g/day
と記載されています。
この量をきちんと食事で摂ろうとすると大人でもなかなか大変で、例えば1日で20gぶんのタンパク質を摂るとすると、食材ごとで例えると
たまご:Mサイズ(50g)を3個
鶏ささみ:87g
絹ごし豆腐:1丁(400g)
納豆:3パック(120g)
ツナ缶:1缶(80g)
ぐらいになります。この量は1日で食べきれなくはないけど、これを毎日続けるのってなかなか大変だろうなと私は思います。
なお、各食材の栄養価については、以下のサイトのデータを参考にしました。
結構な量じゃないですか?!例えば1食に100gくらいしか食べない子供に、400gぶんのお豆腐を一日で食べさせるのって相当大変だと思いますよ。豆腐だけでお腹いっぱいになるんじゃないか、ってくらい。
そのうえ、この問題の大変な点は、いわゆる「日本で推奨されている離乳食」のペースで食べさせてたら全然クリアできないというところです。
たとえばこちらの和光堂さんのベビーフードですが、こちら130g入っていて、この中のタンパク質量は「2.0g」です。一袋あたりの量ですよ?1食でとれるタンパク質が2.0gしかないんです。理想的なタンパク質摂取量を守ろうとしたら、残りの18gを副菜か朝晩で摂らないといけないことになります。
ただしこれは別に和光堂さんが悪いとかそういう話ではなく、日本で一般的に広まっている離乳食の基準が、「ゆるいお米のお粥」と「柔らかくした野菜」がベースになっていて、申し訳程度の豆腐やしらすや納豆くらいしか入れないという文化がベースになっていることが原因と思われます。
和光堂さんに限らず、理想の離乳食とされているものをレシピどおりに作っていたらこうなってしまいがち、という状況があるのだと思います。
(2021.9.21追記)
ではフォローアップミルクはどうでしょう?体にいい成分がまんべんなく摂れる気がしますよね。
しかし成分表を確認しますと、以下のとおりです。
- 和光堂 ぐんぐん タンパク質14.3g(100gあたり)
- 明治 ステップ タンパク質11.1g(100gあたり)
- グリコ アイクレオ フォローアップミルク タンパク質15.5g(100gあたり)
- 森永 チルミル タンパク質14.0g(100gあたり)
- 雪印ビーンスターク つよいこ タンパク質11.5g(100gあたり)
- 雪印メグミルク たっち タンパク質14.5g(100gあたり)
100gあたりでこの量なんです。100cc分ではありません。
ぐんぐんを公式の濃度で薄めた場合、粉100g分はミルク700cc分に相当します。
フォローアップミルクを一日に700cc飲んでも、タンパク質が多くて11〜14gしか摂れないということになります。
フォローアップミルクはビタミン・ミネラルについては心強い手段ですが、タンパク質についてはそこまで強い存在とは言えないかもしれません。
5. プロテインパウダー使用の注意点
ここから先の内容は私の推測になるため、断言はできません。しかし上記の情報をもとに私が考えていることを以下に記載します。
(1)「小さい子にプロテインパウダーは駄目」って言っておかないと、粉ミルク扱いする人が出てくる
タンパク質は体の成長に必要です。けれど摂りすぎれば体の負担になります。未成熟な体を持っている子供や赤ちゃんではなおのことでしょう。そんな中で、「プロテインパウダーは禁止されてないから」って事になっていたら、「じゃあ大人が飲んでるプロテインパウダーでよくない?まとめ買いできるし体にいいし」と考える人が出てきても不思議ではありません。「摂れば摂るだけ体にいい」と考える人もいるかもしれません。
栄養成分や濃度、味の調整のために含まれているものなど、おそらくは子供の臓器では対応しきれない成分なども、大人用の商品には多々含まれていることでしょう。そのような可能性を排除するためにも、一律で「だめ」ということにしておいたほうが良いのでは?と思います。
......ただ、今回の記事を書くに当たりそれなりに検索してみましたが、明確に「プロテインパウダーは赤ちゃん/小さい子にあげてはいけない」と記載している公式の記事は見つけられませんでした。「基本的には駄目だろう」というなんとなーくの感覚が共有されてるだけなのかもしれません。
(2)大人のように飲むのではなく、食材として取り入れるのはアリかもしれない
大人が飲む場合は何らかの液体でシェイクして一気にガッと飲み干すスタイルがメジャーなわけですが、小さな子どもにそれをやると、急激に大量のタンパク質を摂取することになるでしょう。そのような摂り方では、臓器への負担も出ると想像できます。
ですので私自身としては、純粋なプロテインパウダーを「食材の一種」として扱えばよいのではないか、と考えています。なぜならすでに記載したように、赤ちゃんの時点ですでに食事の一部の中にホエイプロテインが含まれたものを摂取しているからです。そして使用する際は、推奨量の上限を意識して量を調整し使用する必要があると考えます。
たとえば1日に20gのタンパク質を定期的に摂取することを考えた場合、上で紹介したアルプロンのホエイプロテインパウダーで摂ろうとすると、
20gあたりタンパク質16.3g→タンパク質20gを摂取するには24.5g必要
と計算できます。1日にプロテインパウダーを24.5g分、つまり朝8g, 昼8g, 夜8gずつ食事やおやつに混ぜ込むことができれば、推奨レベルのタンパク質を毎日摂取させてあげられるわけです(粉ミルクやフォローアップミルクを使用している方は、そこに含まれている量を差し引いて計算してください)。
もちろん、毎食プロテインパウダーである必要はなく、どこか1食は別な食材からタンパク質を摂取するほうが理想的でしょう(食材ならばタンパク質以外の微量の他の栄養素も一緒に摂ることができます)。
けれど、「毎食タンパク質を含む食材を調理しなければいけない」というストレスから開放され、「どこか1食は手を抜ける」と考えてみれば、それはとても心強い手段になるのではないでしょうか。
特に我が家の場合は、卵アレルギーがあるため卵を使用することができず、また肉についてはパサツキが苦手でブレンダーで柔らかくしなければ食べられないという影響もあるため、手軽にタンパク質量を追加できる手段が必須でした。
いずれ、プロテインパウダーを用いた子供向けパンケーキレシピも紹介しようと思います。
5. まとめ
というわけで、私が考えた「プロテインパウダーを使ってもいい理由」についてまとめてみました。私が今後公開するレシピについて疑問を持った方に読んでもらうつもりで書いてます。
私自身はあくまで「混ぜ物のない純プロテインを使用し」「量を調整して適切な量の範囲内でなら」使っても問題はないのでは、と考えている立場です。ですので、「子供のためのタンパク質の調理がつらい〜〜〜!」と悩んでいる方の助けになればいいなと思っています。
[追記]2022/4/13
プロテインを使用したおやつのレシピを公開しました。