離乳食を食べてくれない時期の栄養管理など
今回の記事は、タイトルの通り、「離乳食をたべてくれない時期に、いかに栄養をサポートするか」についてまとめました。
結論としましては、「ミルクに混ぜて飲ましたれ」です。
やり方だけ知りたい方は「5. まとめ」を御覧ください。
1. 「『離乳食は大事』、それはわかっとるんよ」
生後6ヶ月すぎくらいから、じわじわとしんどくなってくる、「子供が離乳食を食べない」問題。
我が家も離乳食の進みはかなり遅い方でした。
経過についてはこちらの記事を参照↓
我が家は私(妻)が医療系だったため、乳児期の栄養管理などについては予めいろいろと調べ物をしていました。
離乳食の重要性としては....
(1)鉄分補給
女医さんが出版しているこちらの書籍、もちろん読みました。「生後5, 6ヶ月から鉄分などが不足してくるため、ライスシリアルなどを食べさせると良い」ということを知り、ライスシリアルを輸入して取り寄せていました。
(2)アレルゲンチェック
また、食物アレルギーの有無を確認するためにも、アレルゲンになりそうな食材を食べてもらってチェックするのも大事な時期ですね。
こちらの文献などにまとまっていますが、2017年の日本小児アレルギー学会による『鶏卵アレルギー発症予防に関する提言』では、「生後6ヶ月から卵の摂取を勧める」ことになっています。
......わかってるんです。
メリットも、重要性も、この時期に摂取させることの大切さも、わかってるんです。
わかってるんですけど。
それもこれも全部、「子供本人が食べてくれる前提ありき」なんです。
食べてくれなきゃそもそも進まないんです。
それがどれだけしんどかったことか.....
2. そもそも同時進行で進める項目が多すぎる
いま改めて振り返って思いますけど、この離乳食導入の時期って、あまりにも同時にいろんなことを考慮しながら進めなきゃいけないので、それがしんどいんですよね!
見てくださいよ!!!
おかしいじゃないですか!!!
生後半年かそこらの赤ちゃんに対して、同時に3つも課題が要求されてるんですよ?!同時に進めるなんてそもそもきつい話なんですよ!!!
......と、当時のわたしは吹っ切れてしまい、一旦割り切って考えることにしました。
まず、「栄養摂取」や「アレルゲンチェック」は、体内に取り込まれさえすればいい。であれば、わざわざ「離乳食」という形を摂る必要はない。
体の動きの機能の発達が、本人のペースで進むのを待ちながら、他の栄養やチェックは進めておく。
というわけで編み出したのが、「ミルクにライスシリアルを混ぜて飲ませる」というやり方でした。
(アレルゲンをチェックする場合も、ミルクに混ぜて飲ませて確認をしていました)
つまり、先程の図を元に表現するならば、下記のようになります。
ちなみに、「鉄が必要ならフォローアップミルクに切り替えるのはどうなの?」と気になる方もいらっしゃるかと思います。
しかしあれは「メインの食事が摂れている子のサポート飲料」という位置づけのため、鉄分は補充しやすくなりますが、メインの食事が摂れていない子に必要な栄養分その他までカバーできる成分とはなっていません。
3.てか、ミルクに混ぜてもいいの?
そこが気になりますよね。しかしこれについては、少々複雑な話があるのです。
(1)「夜泣き予防」としての、おばあちゃんの知恵袋
従来、ヨーロッパ圏内では
「(子供が夜中に空腹で目覚めてくることがなくなるので)寝る前にでん粉(ライスシリアルやセモリナ粉)を溶かしたミルクを飲ませる」
という手法が取られていたようです。それで夜泣き対策を行っていた時代が有るらしく、「おばあちゃんの知恵袋」的な知識のようです。
そのため、我が家のような「そもそも口から摂取できない」という家庭の事情とは別に、「夜泣きしてほしくないから」という目的で、「ミルクにライスシリアルを混ぜてもよいか?」という点がよく質問に挙がっているようです。
そんな質問に対し、healthline.comは以下のように回答しています。
- アメリカ小児科学会(AAP)をはじめとする専門家たちが、哺乳瓶にライスシリアルを入れることを推奨していない。
- 体重増加の恐れがある
- 窒息や誤嚥のリスクが有る
- スプーンから食べる機会を遅らせてしまう
- 便秘になる可能性がある
なんだか恐ろしい文章が並んでいますね。
しかし、ミルクにライスシリアルなどを混ぜる行為は、現代はまったく行われていない、というわけでも無いのです。
healthline.comのページには他にこのような記載もあります。
- 子供がrefluxをよくする場合、アメリカでは「ミルクにとろみをつけるように」と医師から指示される場合がある。
- そのような時、家庭ではライスシリアルをミルクに混ぜることでとろみをつけている場合が多い。
- 医師によっては、「胃食道逆流症(GERD)の子供にだけやるべきだ」と主張する人もいる。
- 生後6ヶ月前だと消化機能が未熟な可能性があるため、ライスシリアルは与えないほうが良い
※reflux:逆流。おそらく嘔吐のこと?
(2)欧米での使われ方(憶測)
「えっ、だめじゃん!やっちゃだめなことおすすめしてるじゃん、このブログの作者は馬鹿なのか?!」
そう思われた方もいるかも知れません。でも落ち着いてください。
憶測ですが、欧米圏での「ライスシリアル入ミルク」の使い方は、以下のような感じと想像されます。
- 夜泣きがもっとも頻繁な低月齢の時期から、ミルクにライスシリアルを混ぜて、眠らせようとする。
- まだ普通のミルクや母乳ですら上手に飲めず、やっと飲む練習をしている段階の月齢から、眠らせるために粘性の高い液体を飲ませようとする。
- 全体のカロリーコントロールも、粘性も考えずにとにかく混ぜる。
上記はあくまで憶測です。しかし、先程の記事の最後の方に、
Remember: Even though your baby may be struggling with sleep right now, they will eventually grow out of this phase. Hang in there a little longer, and your baby will grow out of it before you know it.
「覚えておいてください。今は睡眠に苦労していても、赤ちゃんはいずれこの時期を脱するのです。もう少し頑張れば、赤ちゃんはいつの間にかこの時期を脱するでしょう。」
と記載があるのです。
また、「生後6ヶ月前だと消化機能が未熟な可能性がある」という警告があるのも、それより小さい子に飲ませようとしている親を止めようとしている背景があると推察されます。
そう考えると、想定している層、そして警鐘を慣らしている対象が、我が家の層とは明らかに異なっていると考えられます。
あと、この記事の中では「離乳食の進め方」については記載がありますが、「それでも食べなかった場合にどうすればよいか」については、さっぱり記載がありません。
(3)我が家の状況と、危惧されていることの解決
さて、とはいえさんざんアメリカ小児科学会(AAP)に脅されてしまったわけです。その警鐘の内容についても考え直してみましょう。
体重増加の恐れ
これについては、我が家の状況としては「そもそも必要なぶんの栄養が摂れていない」のが問題なわけです。*1によれば、
6ヶ月ごろからは、母乳だけでは十分なエネルギーが得られない
と記載されています。
そのために離乳食を口から摂る必要がある、という状況で、子供側は何らかの事情(口腔機能の発達など)でそれを食べてくれないのです。であれば、状況としては「カロリー不足」になるわけです。そこをミルクに追加することで補っているだけなので、一日摂取量を理解した上でミルクに混ぜている分には、過剰に体重が増える可能性は低いと考えることができます。
便秘になる可能性
これはむしろ、ガーバーのライスシリアルを使用するならば問題が有りません。なぜなら整腸剤も一緒に入っているからです。ご心配であれば別途粉末状の整腸剤を購入して、ミルクに足して飲ませてみるのも良いかもしれません。
だいたい、口から入る方式が異なるだけで、腸の中に入るのは、離乳食として食べるのもミルクに混ぜて飲むのも変わりは無いはずです。
おそらくこれも、「ミルクしか飲んでいない時期の子にライスシリアルを混ぜて飲ませる」ことを危惧した上での警告と私は考えます。
スプーンから食べる機会を遅らせてしまう
これはごもっともです。「ライスシリアルはミルクであげてるからいいや〜」と離乳食のトレーニングを進めるのをサボっていると、子供側にも挑戦するチャンスが失われてしまいます。
ですので、ここは親側の努力ポイントかもしれません。あくまで、ミルクにライスシリアルを混ぜることは「栄養面の不足を補う」ことを目的としています。そちらで時間を稼ぎながら、子ども自身の発達を待つ、という作戦をとるための手段です。
ただし、「いつもライスシリアルが混ぜてあるからお腹が空きにくい」ことで「空腹感がないから食欲が出ない」というサイクルになる可能性もあります。そういう場合は、時々ライスシリアルを休んで、離乳食を口から食べることに再チャレンジする時間を作ってみるのもいいのではないでしょうか。
(心無い人であれば、我が家の子供の離乳食の進みが遅かった原因として、ミルクに混ぜてライスシリアルを飲ませていたことを挙げるひともいるかも知れません。けれど、実情を確認することなどできないのです)
(もしもミルクに混ぜて居ないまま、口腔機能の発達の問題から1歳5ヶ月まで食べられない状況が続いていたとしたら、どれだけの栄養不足に陥っていたかと考えると恐ろしいものがあります)
窒息や誤嚥のリスクが有る
これは怖いですよね。これに関しては、私のほうで言えることはあまり多くありません。しかしながら、あくまで言えるのは、
「あまり粘性を高くしすぎない。一度にたくさん入れず、できるだけ分散して飲ませる」
「飲んでいる最中、飲み終わったあとの観察を怠らない」
といったところです。
「あくまで胃の中に入ったあとは普通に口から食べた時と同じ液体になってる」「本来であれば口から離乳食を食べても良い月齢の子に摂取させている」ということを念頭に置いておくのが大事だと思います。
生後6ヶ月前だと消化機能が未熟な可能性がある
これはもう、大丈夫ですよね。そもそも離乳食を食べるべき時期にやってるんです。お腹の中に入れば一緒です。
4. どのくらい混ぜていたか
(1)背景により難易度が異なる
ライスシリアルそのものは、15gも摂れれば一日に必要な鉄分の約半分をカバーできます。
※ここにおける「約半分」とは、アメリカの基準のことを指します。
※アメリカの鉄分摂取の目標量は日本よりもずっと高めに設定されています。
というわけで、理想としては15gくらいを1日で摂れるとだいたい安心....というところではあるのですが。
実はこの点、ちょっとむずかしい要素も絡んできます。
例えば、
- 完全母乳なのか
- ミルクと母乳混合なのか
- 完全ミルクなのか
これだけでも難易度が異なります。完全ミルクであれば分散してライスシリアルを混ぜることもできるでしょうが、完全母乳であれば、直接授乳とは別にミルクを作って飲ませるタイミングを作らねばなりません。そこでいっぺんにまとめて15gも混ぜていたら、それこそ「粘性が高すぎる危険性」が出てきてしまうでしょう。
また、完全ミルクや混合栄養の場合、ミルク側に含まれている鉄分量も含めて計算し、摂取量やカロリーを計算する必要があります。
(ちなみに我が家は混合かつ母乳は搾母乳を哺乳瓶で与えており、栄養素の計算はほぼ全部算出していました。もはや趣味の領域でしたので、他のご家庭が無理して真似する必要はありません)
ですので、この記事を読んでいるような、「そもそも食べてくれない子供のための補助」として使う方は、どうぞ、「完璧にカバーする」のではなく、「ちょっとでも体に入ってくれればマシ」ぐらいの気持ちで読んでください。
そもそも離乳食を食べている子だって、毎回理想の量を完食しているとは限らないのですし。
(2)アメリカでの逆流対策用濃度
まず、アメリカでの「それでも逆流ならしょうがない.....」というときに使用されているライスシリアルの濃度について確認してみます。
Up to dateの「Patient education: Acid reflux (gastroesophageal reflux) in infants (Beyond the Basics)」の「Thickened feeds 」の項目には下記のように記載されています。*2
https://www.uptodate.com/contents/acid-reflux-gastroesophageal-reflux-in-infants-beyond-the-basics
To thicken the feed, 1 ounce (30 mL) of formula or expressed breast milk is usually combined with up to 1 tablespoon (15 mL) of infant cereal.
「ミルクを濃くするには、通常、1オンス(30mL)の粉ミルクまたは搾乳した母乳に、大さじ1杯(15mL)までのシリアルを混ぜ合わせる。」
また、テキサス小児科病院のページには下記のような記載がありました。
すると、
But as I tell my patients, however, it's worth a shot at 1 teaspoon per ounce of formula (any more than that they'll suck like the dickens to get the formula from the nipple and swallow lots of air).
「しかし、私が患者さんに言っているように、粉ミルク1オンスにつき小さじ1杯で試してみる価値はあります(それ以上だと、粉ミルクを乳首から出すために不必要なほどに吸ってしまい、空気をたくさん飲み込んでしまいます)。」
(ほぼDeepL翻訳)
といった記載がありました。
1オンスはおおよそ30mLですので、粉ミルク(すでに溶かして液体にしたもの)もしくは搾った母乳約30mLに対しライスシリアルを5g(小さじ1)程度、最大混ぜるとしても15g(大さじ1)程度混ぜるということになると考えられます。
これ、実際に作ってみるとわかりますが、結構粘性があります。
ですので、我が家はこれよりももっと薄めて作っていました。
(3)我が家のブレンド
実際に我が家で作っていた濃度については、以下のようになっています。
[生後7ヶ月ごろ]
- ミルク700〜800ml/日+搾母乳200〜300ml/日。
- 100mlあたり約2.4g混ぜている。
- カロリー:100mlあたり80kcal
- ミルクだけで1日に500〜600kcalくらい摂取。
- 鉄分:ミルク+ライスシリアルで100mLあたり約2g摂れる。
- ライスシリアル換算で、2.4*7=16.8gを摂取できる。
- 鉄は14mg/日くらい摂取できる。
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書によりますと、6-8ヶ月の乳児に必要な栄養としては、
- エネルギー:600kcal
- 鉄分(推奨量):5mg/day
となっております。
なおアメリカの基準だと7-12ヶ月では鉄分は11mg/dayが推奨されているそうなので、日本の倍以上ということになりますね。
で、我が家のブレンドだと、100mlあたり約2.4gのライスシリアルで、カロリーが適正程度、鉄分はアメリカ基準で見てもやや多いくらいの量が摂取できています。すべて飲みきれば鉄分過剰にもなりますが、時折飲み残すことを考えると、そこまで多すぎる量とはいえないと思います。それでも不安な方は、これよりもさらに薄い濃度で飲ませるのもアリだと思います。
100mLに2.4gです。アメリカの推奨濃度(スタートライン)は、「約30mLに対しライスシリアルを5g」ですよ?!雑に計算しても、アメリカの濃度はスタート時点でうちの濃度の6倍以上の濃さということになります。
(100ml/30ml=3.3, 5gx3.3=16.5g, 16.5g/2.4g=6.875倍)
これに比べたら我が家のブレンドはめちゃめちゃ薄いです。もちろん、素のミルクに比べたらある程度の粘性は出てしまうとは思いますが、それでも、逆流のある赤ちゃんに飲ませる程度に比べたらずっと薄いと言えます。
(4)実際に飲ませるときのポイント
いくらアメリカ基準よりも薄いとはいえ、やはりある程度のとろみはついてしまいます。そのため、我が家では、ライスシリアルを混ぜるようになってからは、ワンランク上のサイズの哺乳瓶乳首を使うようにしていました。
(実際に使用していたのは母乳実感シリーズです)
(なお、我が家は1歳4ヶ月までライスシリアル入りミルクを飲んでいたため、最大サイズでも追いつかなくなり、穴を少し広げてから使うなど、応急処置的な対応をしていました)
また、我が家では子供のミルク摂取量が増えるたび、また月齢が進み摂取量の基準が変わるタイミングなどで、濃度や摂取量の再計算、見直しをしていました。
離乳食を食べるようになったタイミングで、段々とミルクに混ぜる量を減らしていくことも大事かと思います。(うちは突然ミルク拒否からの卒乳だったのでわかりませんが.....)
とりあえず、一例報告でしかありませんが、我が家の場合は上記の濃度で窒息も起こさずに無事卒乳まで行くことができました。おかげさまで元気いっぱいの体重多め、筋肉量多めの子供に育っております。
[補足]
おまけですが、ライスシリアルの鉄分過剰摂取を心配して、「日本のお粥フレークをミルクに混ぜること」を私はおすすめしません。
栄養価的な側面以上に、お米の品種が異なるためか、「粘り気」が出やすいという特徴があります。そのため、アメリカのお米で作られているライスシリアルと比べるとより粘性が上がりやすく、飲みにくくなるという問題があります。
5. まとめ
最後に、ここまでの話をまとめたいと思います。
- 生後6ヶ月過ぎても離乳食をなかなか食べてくれない子供
- 鉄分などの栄養やカロリー摂取量、アレルギーの確認が心配
上記の条件を満たす子ならば、「ミルクに混ぜて飲ませてみる」のも一手です。そして飲ませ方としては、
- これまで使用していた哺乳瓶乳首よりもワンサイズ大きいものを用意する
- 溶かして液体にしたミルクもしくは搾った母乳100mLに対し、ライスシリアルを2.4g(心配であればもっと少なめに)溶かしてみる
ところから挑戦してみてはいかがでしょうか。
6. 最後に
「離乳食を食べさせるメリットはわかった」
「離乳食の食べさせ方のコツもわかった」
「だけど、全部試してみてもそれでも全く食べない子の栄養をどうにかする方法は、どこを探しても載っていない」
この状況、しんどいですよね。
どうか、それで自分や家族を追い詰めすぎないでください。
子供の体が育つのをサポートしながら、子供自身にゆっくり成長する時間を作ってあげましょう。
我が家のやり方に質問がある場合は、いつでもご連絡ください。